[toc]
養殖鰤の旬は冬だけではありません。一般的な養殖ブリは通年流通し、技術によって春夏も食べ頃を狙って生産されています。
「養殖鰤は何月が一番おいしいのか」「天然ブリと旬は違うのか」「夏の養殖ブリは本当に旬なのか」。
この記事では、こうした疑問を、天然ブリの季節性と養殖技術の両面から整理します。
特に重要なのが、ニッスイの完全養殖「黒瀬ぶり」です。
ニッスイは、2022年の出荷から黒瀬ぶりの出荷魚を100%人工種苗にし、採卵時期の調整や育種・育成技術を組み合わせることで、通年で安定した高品質のブリを提供できる体制を構築したと説明しています。ニッスイ公式サイト+1
つまり、天然ブリの旬を語るときの「冬」と、養殖ブリの食べ頃を語るときの「通年」は、同じ意味ではありません。
養殖鰤の旬はいつ?まず結論を知ろう
養殖鰤の旬を一言で答えるなら、冬は脂の乗りを楽しみやすい代表的な時期ですが、養殖ブリそのものは通年で食べ頃を設定しやすい魚です。
農林水産省の「うちの郷土料理」でも、養殖ブリは1年を通して手に入り、天然ブリは冬が旬と説明されています。農林水産省
ここが最初のポイントです。
「ブリの旬は冬」という知識は間違いではありません。
ただし、それをそのまま「養殖ブリも冬しかおいしくない」と解釈すると、現在の養殖技術を正しく捉えられません。
養殖では、天然の海で魚がどう成長するかを見るだけではなく、人間が種苗、餌、育成、成熟、出荷時期などを管理します。
国立研究開発法人水産研究・教育機構も、養殖部門でブリ類を対象に、高品質化、安定生産、生産性向上、優良系統の作出、飼料などの研究開発を進めています。フランス国政府
だから養殖ブリの旬を調べるときは、「何月か」だけを見るのでは不十分です。
私は、次の5つを一緒に見ることをおすすめします。
- 脂の乗り
- 身質
- 魚体の大きさ
- 出荷時期
- そのブランドが設定している食べ頃
特に「冬の天然ブリ」と「春夏にも食べ頃を設定できる養殖ブリ」を同じ物差しで比較しないことが重要です。
魚の旬とは、カレンダーに赤丸を付ければ終わる話ではありません。
どんな環境で育ち、どの状態で出荷され、何を目的に食べるのか。
そこまで見て初めて、養殖鰤の旬が見えてきます。
天然ブリの旬はなぜ冬なのか?
天然ブリについては、冬の「寒ブリ」が代表的です。
水産庁も天然ブリを「冬のごちそう」として紹介しており、季節によって場所を変えて回遊する魚であることを説明しています。農林水産省ジャパンフードアカデミー
富山県の「ぶりしゃぶ」について農林水産省が紹介している資料でも、富山湾で冬に捕れる寒ブリは、身が締まり脂のりがよい魚として知られています。農林水産省
なぜ冬なのか。
大きな理由の一つは、天然ブリが自然の環境の中で餌を食べながら成長し、季節に応じて回遊するからです。
秋から冬にかけて脂を蓄えたブリが、寒い時期の食材として評価されます。
だから天然ブリの「冬」は、単なる販売上の都合ではありません。
海の環境と魚の生態が作る、自然由来の季節性です。
ここに天然魚のおもしろさがあります。
海水温、海流、餌、生息海域などの条件が変われば、魚の状態も変わります。
もちろん「天然ブリなら全国どこでも同じ月が最高」と決めつけることはできません。
海域や年によって水揚げ状況や魚体の状態は変わるからです。
それでも、「天然ブリは冬の寒ブリ」という大きな季節感は、日本の食文化の中で現在も強く残っています。
一方で、養殖ブリは違います。

養殖ブリの旬が「通年」と考えられる理由
養殖ブリでは、魚が自然の季節だけに任されているわけではありません。
餌を与え、魚の成長状態を確認し、飼育環境を管理しながら出荷を行います。
水産研究・教育機構も、養殖の特徴として、魚の餌や健康を人が管理することや、一定の大きさの魚を市場へ安定的に供給できることを紹介しています。フランス国政府
もちろん、「管理できる=一年中同じ魚になる」という意味ではありません。
水温や成長段階などによって魚の状態は変化します。
だから、養殖ブリの「通年」は「365日まったく同じ品質」という意味ではありません。
必要な時期に、食べ頃となる魚を安定的に供給しやすい。
これが、より正確な理解です。
ニッスイの完全養殖ブリ研究でも、採卵のタイミングを早めるだけでは夏場に成熟の悪影響による痩せが生じ、おいしさを追求することが難しいという課題があったと説明されています。
そこで人工種苗自体の成長を早める育種や育成技術の改良を進め、短期間で大きく育てながら成熟しにくく、品質の高い大型魚を作る技術につなげたとしています。ニッスイ公式サイト
ここは非常に重要です。
「夏に出荷すれば夏が旬になる」という単純な話ではありません。
夏に食べ頃のブリを作るためには、夏場に起きる成熟や成長の問題まで考えなければならないのです。
つまり、養殖ブリの通年供給は、単純な出荷時期の変更ではありません。
魚そのものの成長を理解し、生産サイクルを組み直す技術の積み重ねです。
養殖鰤の旬を季節ごとに見るとどうなる?
養殖鰤を季節で考えるなら、次のように整理すると分かりやすくなります。
時期 養殖ブリを見るポイント 考え方
冬 脂の乗りを楽しみやすい代表的な時期 濃厚な味わいを楽しみたい人に注目されやすい
春 魚体や生産サイクルによって状態が変わる ブランドごとの出荷情報を見る
夏 夏場の食味を狙った養殖技術がある 夏向けに生産されたブリに注目する
秋 冬に向かう時期 魚体や脂の状態を確認する
ここで表の数字を無理に月単位へ細分化しないのには理由があります。
養殖ブリは、生産者やブランドによって育成条件や出荷設計が違うからです。
「11月なら必ず最高」「7月なら必ず脂が少ない」というような断定はできません。
私は、養殖鰤については「月」よりもその魚がどのような生産サイクルで育ったかを見るほうが重要だと考えています。
これは天然ブリとは大きく違うところです。
天然なら海の季節を読む。
養殖なら海の条件に加えて、生産者の技術と出荷設計を見る。
この違いを覚えておけば、夏の養殖ブリを見ても「旬外れでは?」とすぐに決めつけずに済みます。
夏の養殖ブリは本当においしい?黒瀬ぶりで見る答え
夏の養殖ブリを語るなら、ニッスイの「黒瀬ぶり」を外すことはできません。
ニッスイは黒瀬ぶりについて、年間を通して脂がのった「旬」のおいしさを味わえる養殖ブリとして紹介しています。2022年には出荷魚の100%が人工種苗を使用したものになったとしています。ニッスイ公式サイト+1
ここで注意したいのは、「夏が天然ブリの旬になった」という話ではないことです。
そうではありません。
養殖技術によって、夏にも食べ頃となるブリを供給する仕組みが作られている。
この意味で理解するのが正確です。
ニッスイの研究資料によれば、採卵時期のコントロール、高度な採卵・種苗生産技術、育種・育成技術を組み合わせることで、通年で安定した高品質のブリを提供できるようになったとされています。ニッスイ公式サイト
つまり、夏の養殖ブリは「天然ブリの旬を無理に夏へ移動させた魚」ではありません。
自然界では季節に左右される部分を、養殖技術によって管理し、春や夏にも食べ頃の魚を作るという発想です。
これは、養殖ブリの旬を理解するうえで最大のポイントです。

黒瀬ぶりの完全養殖は何が変わったのか?
黒瀬ぶりについて、現在の情報を正確に押さえておきましょう。
ニッスイの公式情報によると、黒瀬水産は2022年の出荷から、出荷魚の100%を人工種苗にしました。ニッスイ公式サイト+1
完全養殖とは、親魚から卵を採り、人工的に育てた魚を成魚にし、その成魚からさらに卵を採って育てるというサイクルを、人の管理下でつなげていく養殖方法です。ニッスイ公式サイト
一般的なブリ養殖では、天然のブリ稚魚である「モジャコ」を採捕して育てる方法があります。
これに対して完全養殖では、天然の稚魚を採捕することに依存しない生産が可能になります。
ニッスイは、黒瀬ぶりの完全養殖について、限りある海洋資源への負担を軽減するサステナブルな取り組みと説明しています。ニッスイ公式サイト
ここは「旬」とは直接関係ないように見えるかもしれません。
しかし、実は深く関係しています。
なぜなら、人工種苗を安定して生産できれば、養殖魚を育て始めるタイミングを計画しやすくなるからです。
そして生産開始時期を調整できれば、出荷時期も設計しやすくなります。
ニッスイの統合報告書では、採卵時期をコントロールすることで年間を通じた出荷が可能になり、冬が旬とされる天然ブリに対して春・夏にもおいしいブリを生産・出荷できるようになったと説明しています。ニッスイ公式サイト
つまり完全養殖は、「天然資源への依存を減らす技術」であると同時に、「生産時期を設計するための技術」という側面も持っています。
ここに現在の養殖業のおもしろさがあります。
黒瀬ぶりの産地はどこ?宮崎県串間市との関係
養殖鰤を検索するときは、「どこで育てられているのか」も重要です。
黒瀬ぶりを生産する黒瀬水産は、宮崎県串間市に本社を置いています。
ニッスイの資料でも黒瀬水産の本社所在地が宮崎県串間市であることが確認できます。ニッスイ公式サイト+1
串間市は宮崎県の南端に位置し、志布志湾に面した地域です。
黒瀬ぶりの養殖事業を考えるうえでは、この地理的条件も見逃せません。
魚は単純に「暖かい海だからおいしくなる」というものではありません。
水温、潮流、海域の環境、設備、飼育密度、給餌、魚の健康状態など、複数の要素が関係します。
ニッスイは黒瀬水産の取り組みとして、浮沈式生けすや漁場環境のモニタリング、自動給餌システムなども挙げています。ニッスイ公式サイト
これは、養殖業が「魚を生けすに入れて餌を与えるだけ」という時代ではないことを示しています。
海域を選び、設備を設計し、環境を観測し、魚の状態を管理する。
産地という言葉の中には、場所だけでなく生産技術まで含まれている。
私はここを、養殖魚を見るときの新しい視点として押さえておきたいと思います。

養殖ブリの脂の乗りは餌だけで決まるのか?
ここも誤解しやすいポイントです。
養殖ブリの味を語るとき、「餌が重要」という説明は間違いではありません。
しかし、餌だけですべてが決まるわけでもありません。
ニッスイの統合報告書では、黒瀬ぶりのオリジナル飼料「マブレシ」にトウガラシを配合し、血合筋の退色を遅らせるとともに、脂の乗りや歯ごたえの良い養殖ブリの育成につなげていると説明しています。ニッスイ公式サイト
一方で、同社の研究では育種や育成技術の改良も進められています。
つまり、
- 種苗
- 育種
- 飼料
- 成長速度
- 成熟
- 飼育環境
- 出荷時期
といった複数の条件が重なって、最終的な魚の状態につながります。
ここを「餌がいいから必ずおいしい」と単純化してはいけません。
魚の品質は、一つの魔法の材料で決まるものではないからです。
アウトドアでも同じです。
テントだけ良くても、天候判断が悪ければ快適な山行にはなりません。
魚も同じで、飼料だけではなく、生産全体を見る必要があります。
私は、ここに養殖魚を評価するときの面白さがあると感じます。
ブランド名だけを見るのではなく、その魚がどんな技術で作られているかを見る。
それが分かれば、養殖ブリを単純な「天然魚の代用品」として見る必要がなくなります。
養殖鰤と天然ブリはどちらを選べばいい?
ここでは「どちらが上か」という話にする必要はありません。
天然と養殖では、そもそも楽しみ方が違います。
天然ブリの魅力は、自然の季節性を味わえることです。
冬の寒ブリには、海の季節と魚の状態が重なった独特の価値があります。
富山県の寒ブリが代表例で、農林水産省も冬に捕れる寒ブリについて、身が締まり脂のりがよい魚として紹介しています。農林水産省
一方、養殖ブリは供給の安定性があります。
農林水産省も、養殖ブリは1年を通して手に入ると紹介しています。農林水産省
さらに黒瀬ぶりのように、春夏を含めて年間を通した食べ頃を目指す技術があります。
選び方を整理すると、こうなります。
- 冬の季節感を味わいたい → 天然の寒ブリを検討する
- 一年を通してブリを食べたい → 養殖ブリを検討する
- 春夏にも脂の乗ったブリを食べたい → 通年供給をうたう養殖ブランドを確認する
- 刺身で食べたい → 脂だけでなく身質と鮮度を見る
- 照り焼きにしたい → 脂と味付けの相性を見る
- ブリしゃぶにしたい → 脂のある魚体を薄切りで楽しむ
この選び方なら、天然と養殖を無理に勝負させる必要がありません。
「どちらが上か」ではなく、「今日は何を食べたいか」で決める。
私はこの考え方が一番実用的だと思います。
養殖ブリは冬に食べるなら何が合う?
冬に脂の乗った養殖ブリを食べるなら、脂を活かす料理が向いています。
代表的なのが刺身、ブリしゃぶ、照り焼きです。
刺身
脂の乗ったブリなら、刺身で魚そのものの食感と脂の風味を楽しめます。
ただし、生食する場合は必ず「刺身用」「生食用」として販売されている商品を選び、表示された保存方法と消費期限を守りましょう。
加熱用として販売されている魚を、自己判断で生食するのは避けてください。
ブリしゃぶ
ブリしゃぶは、薄く切ったブリをだしにくぐらせて食べる料理です。
脂のあるブリでも、加熱することで印象が変わります。
富山県では冬の寒ブリを使ったぶりしゃぶが郷土料理として紹介されており、寒ブリの身の締まりと脂のりを楽しむ料理として知られています。農林水産省
照り焼き
ブリの脂と甘辛い味付けは相性の良い組み合わせです。
醤油、みりん、酒などを使えば、家庭でも定番料理として楽しめます。
脂がある魚なら味付けに負けにくく、ご飯との相性も良いでしょう。
ブリ大根
ブリの旨味を煮汁に引き出し、大根と一緒に味わう定番料理です。
農林水産省の郷土料理紹介でも、鹿児島県では養殖ブリが盛んな地域とブリ大根の食文化が紹介されています。農林水産省
重要なのは、冬だから必ず煮物にするということではありません。
魚の脂と身質を見て料理を選ぶ。
これが一番失敗しにくい考え方です。
春や夏の養殖ブリはどう食べればいい?
春夏の養殖ブリについても、冬のブリと同じ考え方で大丈夫です。
「夏だから脂がない」と決めつける必要はありません。
黒瀬ぶりのように、年間を通して脂の乗った「旬」のおいしさを味わえることを特徴としている養殖ブリがあります。ニッスイ公式サイト+1
そのため、夏にブリを食べたい場合は、「天然ブリの旬ではないから避ける」のではなく、その商品・ブランドがどの時期を食べ頃としているかを確認するのが合理的です。
刺身なら、魚の状態をそのまま楽しめます。
暑い時期なら、酢や柑橘を使った料理でさっぱり食べる方法もあります。
加熱料理なら、照り焼き、塩焼き、煮付けなど選択肢は豊富です。
夏だから特別な調理法が必要ということではありません。
むしろ、脂の状態に合わせて味付けを変えることが大切です。
例えば脂がしっかりした魚なら、薬味や酸味を加えると食べやすく感じる人もいます。
逆に魚の味をしっかり楽しみたいなら、塩焼きなどシンプルな調理法も候補になります。
ここでも「旬の月」だけで判断しないことがポイントです。

美味しい養殖鰤を選ぶときに見るポイント
実際に魚売り場で養殖ブリを選ぶなら、旬という言葉だけに頼らないようにしましょう。
まず確認したいのは表示です。
養殖か天然か。
刺身用なのか加熱用なのか。
産地はどこか。
消費期限や保存方法はどうなっているか。
こうした基本情報を確認するだけでも、魚選びの精度は上がります。
次に見るのが魚そのものの状態です。
切り身なら、身の色、血合い、表面の状態などが判断材料になります。
ただし、照明や加工状態によって見え方は変わります。
見た目だけで「絶対に新鮮」と判断するのは危険です。
そして価格も重要です。
養殖ブリの価格は、旬だけで決まるものではありません。
飼料費、物流費、漁場の状況、市場環境、販売形態など、複数の要因が関係します。
だから「冬だから高い」「夏だから安い」と単純化することもできません。
私は、魚を買うときには、
旬 → 商品表示 → 魚の状態 → 価格 → 料理
の順番で考えると分かりやすいと思います。
旬は最初の判断材料。
しかし最後の答えではありません。
これは養殖ブリだけでなく、他の養殖魚を選ぶときにも応用できる考え方です。
養殖鰤の旬を「脂」だけで決めてはいけない理由
「旬=脂が一番乗っている時期」と考える人は少なくありません。
確かに、ブリにとって脂は重要です。
しかし、それだけではありません。
刺身なら身質も重要です。
焼き物なら脂の量と身の厚みが料理の仕上がりに影響します。
煮物なら煮崩れしにくさや身の状態も気になります。
さらに食べる人の好みも違います。
脂が多い濃厚なブリが好きな人もいれば、少し軽い味わいを好む人もいます。
だから「最高の旬」を一つの月に固定することには限界があります。
私は、養殖鰤の旬を、
「その魚が、その目的に対して魅力を発揮しやすい時期」
と考えるほうが、食卓では使いやすいと思います。
この視点に立つと、冬の養殖ブリも、春の養殖ブリも、夏の養殖ブリも、それぞれに意味があります。
天然ブリなら自然の季節を楽しむ。
養殖ブリなら生産者が設計した食べ頃も見る。
これが現代の魚選びです。
完全養殖ブリの研究は今後どう進む?
養殖ブリをめぐる技術は、黒瀬ぶりだけで終わっているわけではありません。
国立研究開発法人水産研究・教育機構では、ブリを対象にDNAやゲノム情報を利用した選抜育種に取り組んでいます。
成長が速い、病気に強いなどの優良な形質を持つ系統を作る研究が進められています。フランス国政府
これは、今後の養殖ブリを見るうえで重要です。
これからの養殖は「魚を育てる技術」だけではありません。
どのような性質を持つ魚を次世代につなげるのか。
どのような餌を使うのか。
どんな海域で育てるのか。
どのように環境負荷を抑えるのか。
どうすれば安定した品質で供給できるのか。
こうした複数の課題を同時に解決していく必要があります。
ニッスイも黒瀬ぶりについて、選抜育種、浮沈式生けす、環境モニタリング、自動給餌など複数の技術を組み合わせていると説明しています。ニッスイ公式サイト
ここまで来ると、養殖ブリを「天然ブリより上か下か」で比較すること自体が少しズレています。
養殖は養殖として、独自の技術体系を持つ水産業になっているからです。
これは私が今回の資料を読み直して、特に強く感じたところです。
考察・見通し|これからは「旬を当てる」より「食べ頃を選ぶ」
ここからは筆者としての私見です。
養殖鰤の旬を調べると、どうしても「何月が一番おいしい?」という答えを探したくなります。
しかし、現在の養殖技術を見ると、その質問だけでは情報が足りません。
天然ブリについては、冬の寒ブリという明確な季節感があります。
水産庁や農林水産省の資料でも、天然ブリと冬の寒ブリの関係が紹介されています。農林水産省ジャパンフードアカデミー+1
ところが養殖ブリは、人工種苗、育種、飼料、育成技術、採卵時期の調整などによって、出荷時期そのものを設計する方向へ進んでいます。
黒瀬ぶりについてニッスイが「一年中味わえる」「春・夏でもおいしいブリ」と説明しているのは、その象徴です。ニッスイ公式サイト+1
私はここに、魚の「旬」という概念が少しずつ変わっていると感じます。
もちろん、天然魚の旬がなくなるわけではありません。
冬の寒ブリには、自然の季節を味わう価値があります。
むしろ養殖技術が発達するほど、天然魚と養殖魚の役割が明確になる可能性があります。
天然魚は自然が作る季節の味。
養殖魚は安定供給と品質設計。
それぞれの強みを活かす方向です。
さらに、完全養殖という技術には資源面の意味もあります。
黒瀬ぶりでは2022年から出荷魚の100%が人工種苗となり、天然の稚魚に依存しない生産へ移行しています。ニッスイ公式サイト+1
ニッスイは2025年の発表で、黒瀬水産について年間300万尾出荷を目指す取り組みも示しています。ニッスイ公式サイト
ここから見えてくるのは、「いつ食べられるか」だけではありません。
必要な時期に、必要な量を、どのような資源利用で供給するか。
これが養殖業の大きなテーマになっています。
私たち消費者が魚を選ぶときも、この視点を持っておくと面白いでしょう。
「天然だから良い」「養殖だから劣る」と決めつけるのではなく、
- どこで育ったのか
- どのような種苗なのか
- どんな育成技術なのか
- どの時期を食べ頃としているのか
- どんな料理に向いているのか
を確認する。
これなら、魚の情報をもっと立体的に理解できます。
そして私は、これからの養殖鰤については「旬を当てる」よりも「食べ頃を選ぶ」ことが重要になると考えています。
冬なら冬の魅力があります。
春なら春の魚の状態があります。
夏には夏でも食べ頃になるよう設計された養殖ブリがあります。
秋には冬へ向かう魚体の変化があります。
カレンダーだけを見るのではなく、魚の背景を見る。
それが、これからの養殖ブリを楽しむ一番面白い方法ではないでしょうか。
もちろん、特定商品の価格、在庫、販売時期、取扱店舗などは変動します。
購入する際は、その時点の販売表示やメーカー・販売店の公式情報を確認してください。
まとめ|養殖鰤の旬は冬を基準にしながら通年で考えよう
養殖鰤の旬は、冬だけと考える必要はありません。
一般的な養殖ブリは1年を通して流通し、農林水産省も養殖ブリは1年を通して手に入ると説明しています。農林水産省
一方、天然ブリは冬が旬の代表的な魚で、寒ブリは冬の季節を象徴する食材です。農林水産省ジャパンフードアカデミー+1
そして現在は、養殖技術そのものが大きく進歩しています。
ニッスイの黒瀬ぶりでは、2022年から出荷魚の100%が人工種苗となり、完全養殖を実現しています。ニッスイ公式サイト+1
さらに採卵時期のコントロール、育種、育成技術などによって、通年で安定した高品質のブリを供給する仕組みが構築されています。ニッスイ公式サイト+1
だから「ブリの旬は冬」という知識だけで終わらせるのは、少しもったいないのです。
天然ブリは自然が作る冬の旬。
養殖ブリは自然条件と生産技術を組み合わせた通年の食べ頃。
この違いを理解すれば、春夏の養殖ブリを見ても「旬ではない」と決めつける必要がなくなります。
そして魚を買うときは、旬だけでなく、脂、身質、サイズ、鮮度、表示、価格、料理との相性まで見てください。
今日食べたいのが濃厚な脂のブリなら、冬の魚を探す。
夏にブリを食べたいなら、夏にも食べ頃となる養殖ブリを探す。
これでいいのです。
魚は「正解の月」を当てるゲームではありません。
その魚が一番楽しめる条件を、自分で見つけること。
それが、養殖鰤をもっとおいしく、もっと深く楽しむための第一歩です。
今日が一番若い日です。
食卓でも自然でも、知った瞬間から楽しみ方は変えられます。
よくある質問
養殖鰤の旬は何月ですか?
一般的な養殖ブリでは、脂の乗りを楽しみやすい冬が代表的な時期です。
ただし、養殖ブリは通年流通しており、春夏にも食べ頃となるよう生産する取り組みがあります。
天然ブリと養殖ブリでは旬が違いますか?
はい、考え方が違います。
天然ブリは自然の季節変化の影響を強く受け、冬の寒ブリが代表的です。
養殖ブリは種苗、餌、育成、成熟、出荷時期などを管理できるため、天然ブリよりも通年供給を設計しやすくなっています。
夏の養殖ブリはおいしいですか?
夏にも食べ頃となる養殖ブリがあります。
特に黒瀬ぶりについて、ニッスイは年間を通じて脂がのった「旬」のおいしさを味わえる養殖ブリとして紹介しています。ニッスイ公式サイト
ただし、養殖ブリすべてが夏に同じ状態になるわけではないため、商品やブランドの情報を確認することが大切です。
黒瀬ぶりの完全養殖はいつからですか?
ニッスイによると、黒瀬ぶりは2022年の出荷から、出荷魚の100%が人工種苗による完全養殖になりました。ニッスイ公式サイト+1
養殖ブリは一年中同じ味ですか?
いいえ。
通年供給できることと、一年中まったく同じ状態であることは別です。
水温、成長段階、飼育環境、餌などによって魚の状態は変わります。
養殖ブリを選ぶときは何を見ればいいですか?
旬だけでなく、養殖・天然の別、産地、刺身用か加熱用か、消費期限、保存方法、魚体の状態などを確認しましょう。
旬は脂の乗りだけで決まりますか?
いいえ。
脂は重要ですが、身質、魚体サイズ、鮮度、供給時期、料理との相性なども食べ頃を判断する材料になります。
特に養殖ブリでは、出荷時期を生産者が設計できるため、「旬=脂のピーク」だけで考えないことが重要です。

